目次
はじめに
宅見(たくみ)所長
宅建士試験の中で難易度が高く点数が取りにくい科目が「権利関係」です。
権利関係は、民法と特別法で構成され、特別法は、借地借家法、区分所有法、不動産登記法が出題されます。
権利関係の出題数は50問中14問出題され、試験全体の28%(約1/4)を占めます。
宅建士試験研究所の権利関係の目標は9問正解です。権利関係は範囲が膨大(特に、民法)で対策が難しい科目ですが、ここ最近の本試験の合格基準点が高くなっている傾向を考えて目標点数は9点です。
実際に試験に合格する人でも、7~9問程度正解する人たちの割合が高いです。宅建業法の点数にもよりますが、半分程度の点数でも良しとするのが権利関係です。
私の権利関係の得点は7点でした。私の反省点は、理解しながら覚えずにただ無理に暗記するという勉強方法だったので、本番の試験では対応できない問題が多かったです。
権利関係は、難易度が高く、かつ、頻出度が低い項目は、あまり深入りしないで次に進むことが大切です。
このような項目は、特に忙しくて勉強時間がとりにくい人は、過去問を中心にさらっと取り組むことも必要です。
権利関係の特徴
宅見(たくみ)所長
- 民法と特別法の借地借家法、区分所有法、不動産登記法で構成されている
- 50問中14問出題される(全体の28%を占める)
- 民法から10問、特別法から4問出題される(借地借家法2問、区分所有法1問、不動産登記法1問)
- 学習範囲はかなり広い、特に民法が広く条文は1,000条超ある(メリハリのある勉強が大切)
- 難易度が高い項目が多く、点数が取りにくい(対策しにくい)
- 満点を狙う科目ではなく、半分以上の得点を目指す科目(宅建士試験研究所では9点が目標)
- 機械的に暗記するのではなく、理解しながら進めると知識が定着する科目
- 事例問題は、当事者の関係を簡単に図を書くと解きやすい
権利関係は宅建業法と比較して学習範囲はかなり広いです(民法だけでも条文は1,044条)。
「宅建業法の出題傾向と対策について」は、こちら👇をご覧下さい。
【宅建士試験】宅建業法の出題傾向と対策、攻略のポイントについて解説!
ただし、民法は頻出度の低い項目もいくつかあるため、ある程度範囲を絞りながら勉強することができます。対策は立てにくいですが、条件はみんな同じです。
あまり悩まず、深く考えすぎないようにして、どんどん次へ進めましょう。
直近の改正情報は出題される可能性が高いため、必ず確認しておいて下さい。
権利関係の出題傾向(頻出度と重要度)
宅見(たくみ)所長
※👇スマートフォンの方は左右にスライドして表をご覧下さい。
区分 | 編 | 番号 | 項目 | 頻出度 | 重要度 |
民法 | 総則 | 1 | 制限行為能力者 | 普 | |
2 | 意志表示 | 高 | |||
3 | 代理 | 普 | |||
4 | 条件・期限・時効 | 普 | |||
物権 | 5 | 物権(相隣関係・共有・地上権・地役権・占有権) | 普 | ||
6 | 抵当権 | 高 | |||
7 | 留置権・先取特権・質権 | 低 | |||
債権 | 8 | 保証・連帯保証 | 普 | ||
9 | 連帯債務 | 低 | |||
10 | 債務不履行・解除・手付 | 高 | |||
11 | 弁済・相殺 | 低 | |||
12 | 売買契約 | 普 | |||
13 | 賃貸借 | 高 | |||
14 | 委任・請負・その他契約 | 普 | |||
15 | 不法行為 | 普 | |||
相続 | 16 | 相続 | 高 | ||
物権 | 17 | 不動産物権変動 | 高 | ||
特別法 | ー | 18 | 借地借家法(借地) | 高 | |
19 | 借地借家法(借家) | 高 | |||
20 | 建物区分所有法 | 高 | |||
21 | 不動産登記法 | 高 |
権利関係の中でも民法の範囲は広いため、深入りせず範囲を絞って勉強することが合格の近道です。権利関係は、宅建業法のように満点を狙う科目ではありません。
合格することを一番に考えて、頻出度の高い項目に絞って効率よく勉強することが大切です。
権利関係の対策・攻略ポイントを一言解説
宅見(たくみ)所長
総則(1.制限行為能力者、2.意思表示、3.代理、4.条件・期限・時効)
1.制限行為能力者
出題頻度は意志表示より少ないですが出題されやすい項目です。制限行為能力者制度の4つのタイプを比較しながら学習すると覚えやすいです。その中でも、未成年者、成年被後見人についてはしっかりと確認しておきましょう。
2.意思表示
頻出度が高く、重要な項目です。当事者間だけでなく第三者がからんでくるパターンを確実に覚える必要があります。意志表示は全般的に出題されます。判例も確認しておきましょう。
3.代理
頻出度は意志表示よりやや低いですが、意志表示同様に重要度の高い項目です。代理人が顕名(けんめい)をしなかった場合の効果や無権代理は頻出度の高い項目です。代理も全般的に学習しておきましょう。
4.条件・期限・時効
条件・期限・時効の中では、「時効」が大切です。意志表示や代理よりは重要度はやや低いです。所有権の取得時効や消滅時効期間、時効の中断事由等確実に覚えましょう。
物権(5.物権(相隣関係・共有・地上権・地役権・占有権)、6.抵当権、7.留置権・先取特権・質権)
5.物権(相隣関係・共有・地上権・地役権・占有権)
この項目の中では、相隣関係と共有が大切です。難易度は低い問題が出題されるので、確実に点数を取りたい項目です。
6.抵当権
抵当権は毎年出題され、とても重要度の高い項目です。ただし、内容的にレベルが高く、かつ、難易度の高い問題が出題されますので、正解できなくても気にしないようにしましょう。基本的な内容を押さえて、深入りしないことが大切です。
7.留置権・先取特権・質権
頻出度、重要度の低い項目です。なるべく時間はかけず、基本的な内容を覚えて、過去問を確認しておきましょう。それぞれ比較しながら学習すると覚えやすいです。
債権(8.保証・連帯保証、9.連帯債務)
債権は、範囲が広く、比較的難易度の高い内容が多いですが、本試験の問題レベルは全般的に普通です。
8.保証・連帯保証
頻出度は普通ですが、重要度は高い項目です。普通保証、連帯保証の違い等比較しながら整理しておきましょう。
9.連帯債務
連帯債務は、サラッと確認する程度で良いです。簡単に見ておきましょう。
債権(10.債務不履行・解除・手付)
債務不履行・解除・手付は、頻出度、重要度ともに高い項目です。債務不履行の項目では、履行不能や履行遅滞の場合の効果、損害賠償額の予定はしっかりと把握しておきましょう。
解除の項目は、解除の方法や効果、第三者との関係が大切です。手付の項目は、手付による解除や損害賠償請求について確認して下さい。
債権(11.弁済・相殺、12.売買契約、13.賃貸借、14.委任・請負・その他契約、15.不法行為)
11.弁済・相殺
弁済・相殺は、頻出度は低く、重要度は普通の項目です。基本的な内容を覚えて、過去問を確認しておく程度で良いです。弁済は、第三者弁済、相殺は、要件や効果を整理しておきましょう。
12.売買契約
売買契約は、頻出度、重要度ともに普通レベルです。売買契約の中では、特に売主の担保責任の項目はしっかりと整理しておきましょう。買主が悪意でも、解除や損害賠償請求、代金減額請求ができる場合を最初に覚えると全体的に暗記しやすいです。
13.賃貸借
賃貸借は、頻出度が高く、また重要度も高い項目です。11から15の項目の中では最も大切です。全体的に確認しておく必要がありますが、中でも敷金に関する権利や義務は確実に覚えておきましょう。
14.委任・請負・その他契約
委任・請負・贈与・使用貸借・消費貸借・寄託等の項目がありますが、中でも、「委任」と「請負」はしっかりと確認していただきたい項目です。委任契約は、委任者と受任者の義務や委任契約の終了原因について、請負契約は、請負人の担保責任を中心に整理しておきましょう。
15.不法行為
ここ最近連続して出題されています。出題が予測される重要度の高い項目です。損害賠償請求について債務不履行と比較しながら学習すると覚えやすいです。使用者責任、共同不法行為等も確認しておきましょう。
16.相続
相続は、毎年出題されるとても重要度の高い項目です。相続に関する基本的な内容(法定相続人や法定相続分)、相続の承認と放棄、遺言、遺留分等は大切な項目です。全般的に整理して覚える必要があります。確実に点数を取りたい項目です。
17.不動産物権変動
「不動産物権変動」は、頻出度、重要度がとても高い項目です。毎年出題されます。難易度が高いため、理解しながら進めないと正解することは難しくなります。
ただし、「抵当権」と同様に問題レベルは高く合格者でも正答率は低いため、解けなくても気にする必要はありません。テキストの内容をおさえて、過去問は何度も繰り返し解いて確実に正解できるようにしておきましょう。
18.借地借家法(借地)、19.借地借家法(借家)
借地借家法は、毎年のように、ほぼ借地1問、借家1問の合計2問出題されるとても重要な法律です。過去出題された問題や類題がよく出題されます。
頻出度の高い項目は、存続期間や更新方法、第三者への対抗要件です。借地も借家も一通り確認しておきましょう。民法の賃貸借と借地、借家を比較して整理すると覚えやすいです。
20.建物区分所有法
建物区分所有法は毎年1問出題される大切な法律です。集会や規約を中心に、しっかりと理解しながら暗記しましょう。本試験では大切な法律ですが、あまり時間をかけすぎないように注意しましょう。
21.不動産登記法
不動産登記法も毎年1問出題される重要度の高い法律です。表示に関する登記、権利に関する登記、登記手続きについて(原則と例外)等一通りテキストを確認し、過去問は確実に解けるようにしましょう。
不動産登記法は、本試験問題の難易度は高いです。丁寧に勉強することは大切ですが、建物区分所有法と同様に時間をかけすぎないように注意しましょう。
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まとめ
宅見(たくみ)所長
今回は、権利関係の出題傾向と対策や攻略のポイントについてみてきました。権利関係の範囲は膨大ですが、宅建業法のように全範囲がまんべんなく出題されるわけではありません。
また、宅建業法と比較して難易度が高い項目が多く、かなり難しいレベルの問題も出題されます。
そのような中で、目標の点数を確保するためには、頻出度が高く重要度の高い箇所を重点的に優先順位をつけながら勉強することが必要になります。
重要度の高い項目で、難易度のレベルが低い、または普通ランクの問題は確実に正解したいところです。
頻出度や重要度が高くても、例えば、「抵当権」、「不動産物権変動」、「不動産登記法」などのように難問が出題されて合格者でも間違える確率が高い項目もあります。
これらの項目は、基本的な内容をおさえて過去問は解けるようにしておくことは必要ですが、深入りしないようにしましょう。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。